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今回は「2型糖尿病」とその治療薬の一つであるGLP-1受容体作動薬(GLP-1アナログ製剤)の作用機序を中心にご紹介します。
2型糖尿病に使用するGLP-1受容体作動薬(注射、経口)は6製品承認されていますので、その一覧についてもまとめてご紹介します。
2022年にはGIP/GLP-1受容体作動薬のマンジャロ(チルゼパチド)も登場しましたが、こちらは別記事で解説しています。
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マンジャロ(チルゼパチド)の作用機序、GLP-1受容体作動薬との比較・違い【糖尿病】
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生体内の血糖調節システム
通常、生体内では以下のいくつかのホルモン等によって血糖が一定に保たれています。
<血糖を上昇させる生体内物質>
- グルカゴン
- アドレナリン
- ノルアドレナリン
- コルチゾール
- 成長ホルモン
<血糖を下降させる生体内物質>
- インスリン
このように、血糖を上昇させる物質は数種類存在していますが、血糖を下降する物質はインスリンしかありません。
インスリンの作用とGLP-1
インスリンは膵臓から分泌されるホルモンです。
分泌されたインスリンは、細胞に作用することで血中のブドウ糖を細胞内に取り込む働きがあります。
また、インスリンの分泌を促進させる物質の一つに「GLP-1」と呼ばれるホルモンがあります。
GLP-1は食事が小腸を通過することで分泌されるホルモンで、以下のような働きを有します。
- インスリン分泌促進(血糖依存的)
- グルカゴン分泌抑制(血糖依存的)
- 胃排泄遅延
- 食欲抑制
血糖値が低い時にはインスリンの分泌を促進しないため、過剰に分泌されても低血糖になる恐れがありません。
しかし、GLP-1は「DPP-4」と呼ばれるタンパク質によって半減期1~2分ほどの早さで速やかに分解され、効果はすぐ失われます。
糖尿病とは
平成29年の厚労省調査(3年に1度)によると、糖尿病の総患者数は約328万人超であり、前回の調査から12万人以上増加しています。
糖尿病はその名の通り、血中ブドウ糖濃度が高い状態が慢性的に継続している病態です。
健康診断等で
- 空腹時血糖値が126mg/dL以上
- HbA1cが6.5%以上
の場合に疑われ、数回の検査を経て確定診断されます。
糖尿病にはその原因や病態によって
- 1型糖尿病
- 2型糖尿病
に分類されています。
日本人では約95%が「2型糖尿病」に分類されており、遺伝因子と食生活・運動不足・肥満等の生活習慣が原因で、以下の理由で引き起こされると考えられています。
- インスリンの分泌低下:インスリン量が減っている
- インスリンの抵抗性増大:インスリンの効きが悪くなっている
主にはインスリンの抵抗性増大によると考えられています。(インスリン分泌低下は軽度~中等度と様々)
一方、1型糖尿病は遺伝因子や自己免疫等によって、インスリンを分泌する膵臓のβ細胞が欠損・破壊されている状態です。(インスリンの分泌低下)
従って、治療の基本はインスリンの補充療法です。
2型糖尿病の治療
2型糖尿病治療は
- 食事療法
- 運動療法
- 薬物療法
を基本としますが、最も大切なのは食事療法と運動療法です。1)
食事/運動療法を2~3カ月続けても血糖値が下がらない場合、薬物療法が開始されます。
2型糖尿病治療薬
2型糖尿病治療薬にはいくつかの種類があり、年齢や肥満の程度、合併症、肝・腎機能等によって使い分けられます。
まずは経口血糖降下薬の少量から開始されることが多いです。1)
経口血糖降下薬には以下の種類があり、糖尿病の原因(インスリン分泌低下、抵抗性増大)によって使い分けられます。
<インスリン分泌低下を改善>
- スルホニル尿素(SU)薬:インスリン分泌促進
- グリニド薬:より速やかなインスリン分泌促進
- DPP-4阻害薬:GLP-1分解抑制によるインスリン分泌促進とグルカゴン分泌抑制
<インスリン抵抗性を改善>
- ビグアナイド薬:糖新生の抑制
- チアゾリジン薬:インスリンの感受性を向上
加えて、ブドウ糖の吸収を抑制する「α-グルコシダーゼ阻害薬」や、ブドウ糖の排泄を促進する「SGLT2阻害薬」等も使用されます。
これら経口血糖降下薬を使用しても血糖値が下がらない場合、経口薬の増量や併用、そして注射剤(GLP-1受容体作動薬、インスリン製剤)の使用が検討されます。
また、最近では経口血糖降下薬でコントロール不十分な場合、BOTやBPTと呼ばれれる治療が行われることもあります。
- 持続型インスリン製剤+経口血糖降下薬:BOT(Basal Supported Oral Therapy)
- 持続型インスリン製剤+GLP-1受容体作動薬:BPT(Basal supported post Prandial GLP-1 therapy)2)
まずはBOTを行い、次いでBPTを行うといった流れですね。
GLP-1受容体作動薬の作用機序
通常、生体内のGLP-1はDPP-4によって速やかに分解されてしまいます。
GLP-1受容体作動薬は、GLP-1のアミノ酸配列を改変させてDPP-4の分解を受けにくくした薬剤です!
別名、「GLP-1アナログ製剤」とも呼ばれています(アナログとは“類似の”という意味です)。
従って、投与されると生体内で長時間作用するのが特徴です。
また、GLP-1は血糖値が低い時にはインスリンの分泌を促進しないため、生体内に長時間滞留しても低血糖になる恐れがありません。
胃排泄遅延と食欲抑制によって、体重減少効果も示唆されています。
余談ですが、アメリカドクトカゲと呼ばれるトカゲが、小動物を大量に捕食しても血糖値が全然上昇しないことがきっかけで、体内を調べたところ、ヒトのGLP-1によく似たGLP-1アナログが発見されたようです。
GLP-1受容体作動薬の一覧:単剤・配合剤
現在(2023年5月)までに承認されているGLP-1受容体作動薬(およびGIP作動薬)と投与方法は以下の通りです。
<単剤>
製品名 | 一般名 | 用量 | 用法 |
ビクトーザ皮下注 | リラグルチド | 1日 0.3-0.9mg |
1日1回皮下注 |
バイエッタ皮下注 | エキセナチド | 1日 10-20μg |
1日2回皮下注 朝・夕食前(60分以内) |
リキスミア皮下注 | リキシセナチド | 1日 10-20μg |
1日1回皮下注 朝食前(60分以内) |
トルリシティ皮下注 | デュラグルチド | 1週間 0.75mg(or 1.5mg) |
1週間1回皮下注 |
オゼンピック皮下注 | セマグルチド | 1週間 0.25-1mg |
1週間1回皮下注 |
リベルサス錠 | セマグルチド | 開始:3mg 維持:7mg |
1日1回経口投与 |
マンジャロ皮下注 ※GIP/GLP-1受容体作動薬 |
チルゼパチド | 開始:2.5mg 維持:5mg |
1週間1回皮下注 |
2020年には初の経口GLP-1受容体作動薬のリベルサスが承認されていますね。
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リベルサス(経口のセマグルチド)の作用機序と特徴【糖尿病】
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その後、2022年には1つの分子でGIP作用とGLP-1作用を有するマンジャロ皮下注も承認されました。もう少し詳しい比較表については、以下の記事で解説していますので、併せてご参考ください♪
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マンジャロ(チルゼパチド)の作用機序、GLP-1受容体作動薬との比較・違い【糖尿病】
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<配合剤>
製品名 | 配合成分 | 用量 | 用法 |
ゾルトファイ配合 | ・トレシーバ(インスリンデグルデク) ・ビクトーザ(リラグルチド) |
・インスリン:1~50単位 ・リラグルチド:0.036~1.8mg |
1日1回 |
ソリクア配合注 | ・ランタス(インスリングラルギン) ・リキスミア(リキシセナチド) |
・インスリン:5~20単位 ・リキシセナチド:5~20μg |
1日1回 |
あとがき
GLP-1受容体作動薬(注射、経口)は現在6製品が承認されており、週1回投与製剤は2製品(トルリシティ、オゼンピック)です。
ビデュリオンは発売中止になりました。
トルリシティとオゼンピックは直接比較試験(SUSTAIN-7試験)3)が報告されていますので、使い分けのヒントになるかと思います。
詳しくは以下の記事をご覧ください。
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オゼンピック(セマグルチド)の作用機序と副作用【糖尿病】
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また2019年にはGLP-1受容体作動薬とインスリン製剤を配合した初の医薬品(ゾルトファイ配合注)が登場しました。以下の記事で特徴やエビデンスについて解説していますので是非ご覧ください。
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ゾルトファイ配合注(インスリンデグルデク/リラグルチド)の作用機序【糖尿病】
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GLP-1受容体作動薬とGIP/GLP-1受容体作動薬の詳しい比較表については、以下の記事で解説していますので、併せてご参考ください♪
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マンジャロ(チルゼパチド)の作用機序、GLP-1受容体作動薬との比較・違い【糖尿病】
続きを見る
以上、今回はGLP-1受容体作動薬の作用機序と単剤・配合剤の一覧についてご紹介しました☆
引用文献・資料等
- 日本糖尿病学会|糖尿病治療ガイド
- Pharm Med 2014; 32: 101-11
- Lancet Diabetes Endocrinol. 2018 Apr;6(4):275-286.
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